天涯孤独でなければ、自分の財産は、配偶者や子どもが相続することになるでしょう。
天涯孤独の方には、そういった相続人がいません。自分の財産はどうなってしまうのでしょうか?
ここでは、自分の財産がどうなるか?また、それに対する事前の対策を紹介します!
天涯孤独の人の遺産相続はどうなる?
天涯孤独の人の財産がどうなるのか、見ていきましょう。
相続手続きは、相続財産清算人が行う
遺産相続の手続きは、通常は配偶者や子どもなどの法定相続人が進めていきます。
しかし、天涯孤独の場合、法定相続人がいません。その場合は、「相続財産清算人」が相続手続きを行うことになります。
相続財産清算人とは、相続財産清算人の選任の申立てによって選任された人です。
相続財産清算人の選任の申立てはだれが行うか?
利害関係人または検察官が行います。
- 亡くなった方の債権者(お金を貸していた人)が回収を行いたい
- 亡くなった方の特別縁故者(とくべつえんこしゃ)が相続を受けたい
こんなときは、利害関係人として「相続財産清算人の選任の申立て」を行えます。
特別縁故者とは、亡くなった方と生計をともにしていた者、たとえば、内縁の配偶者や事実婚の関係のある者などです。
相続財産清算人の選任の申立てをだれも行わなかったら?
相続財産清算人の選任の申立ては、必ずだれかが行わないといけないものではありません。
相続財産清算人の選任の申立てをだれも行わなかった場合は、財産は放置されます。
放置された後どうなるかは、財産のかたちによって変わると思います。
たとえば、銀行預金であれば10年以上放置されている口座は休眠口座になります。
休眠口座になった預金は、休眠預金等活用法に基づいて国が活用します。
相続財産清算人が行う内容
天涯孤独の人の相続について、相続財産清算人が行う主な内容を記載します。
(実際には、報告や必要書類など、細かい作業がたくさんありますが、ポイントのみ抜粋しています。)
亡くなった方の財産の調査や管理
亡くなった方が残している財産を調査し、どのような財産があるのかを整理して、財産目録を作成します。
ここで整理した財産が、誰にどのように財産を振り分けるかの元データになります。
債権者や特別縁故者の申し出を受け付ける
亡くなった人に債権者や特別縁故者などがいる場合は、相続しないといけません。
そのため、一定期間、債権者や特別縁故者からの申し出を受け付けます。
債権者や特別縁故者に支払いする
申し出のあった債権者や特別縁故者に財産目録のなかから適正な財産を支払いします。
残った財産は国庫(国の財産)になる
債権者や特別縁故者に支払ったあとも財産が残っている場合は、国の財産になります。
つまり、債権者や特別縁故者がいない場合は、財産はすべて国の財産になります。
天涯孤独の人の遺産相続はどうなるのかのまとめ
ここまで説明したように、天涯孤独の人の財産は、相続人がいない場合は、最終的に国の財産になる可能性があります。
だれも相続財産清算人の選任の申立てをしなかったとしても放置されるため、ご自身の期待する使われ方にはなりません。
そのため、ご自身の財産をどう使ってほしいのかを考え、事前に対策しておくことが必要です。
天涯孤独の人の遺産相続の対策3選
通常は、事前対策をしていなくても財産は法定相続人に相続されます。しかし、天涯孤独の方は、法定相続人がいないため、なんらかの対策が必要です。
天涯孤独の方が事前に行える財産相続に関する対策を3つ紹介します。
- 遺言書を作成する(主に、財産の使い道を具体的に指定したい場合)
- 財産管理等委任契約を結ぶ(主に、財産の使い道をだれかに委ねたい場合)
- 成年後見制度を利用する(主に、財産の使い道をだれかに委ねたい場合)
遺言書を作成する
自分の財産をどのように扱ってほしいかを遺言書として残しておくという対策です。
だれにどのように財産を分配してほしいかを記載しておくことができます。
遺言書の残し方は大きくわけて以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言(自分で保管)
- 自筆証書遺言(法務局で保管)
- 公正証書遺言(公証役場)
天涯孤独の方には、自筆証書遺言(法務局で保管)が断然おすすめです。
「自筆証書遺言(自分で保管)」や「公正証書遺言(公証役場)」は、死亡時に相続人に通知されません。親族のいない天涯孤独の方にとっては、遺言書を残していても気付かれない可能性が高いです。
「自筆証書遺言(法務局で保管)」であれば、戸籍担当部局と連携して死亡時には指定した人に通知してもらえます。
「自筆証書遺言(法務局で保管)」は、「自筆証書遺言書保管制度」という制度で、令和2年7月10日に開始された比較的新しい便利なサービスです。ぜひ活用しましょう!
財産管理等委任契約を結ぶ
財産管理等委任契約とは、自分の財産の管理を他者に委ねる契約のことです。
だれか信頼できる知人に財産の管理を委ねたい場合に利用できます。
「財産を相続したい相手はいるが使い道はその人に委ねたい」や、「私生活のサポートも契約に含めたい」などに利用できます。
財産管理の開始時期や内容は自由に決められるため、自分が健康な時期から契約を開始することもできます。
成年後見制度を利用する
成年後見制度とは、自分が認知症や精神障害等になったときに支援をしてくれる人(後見人)を契約しておく制度です。
財産管理等委任契約との主な違いは、以下です。
- 認知症や精神障害等になった場合に限られている
- 取消権(詐欺の被害にあった場合の契約キャンセル)が認められる
- 公証役場での手続きであり社会的信用がある
- 家庭裁判所による業務遂行状況のチェックがある
信頼できる知人がいない方は、後見制度のサービスを提供している弁護士や団体を後見人として利用することもできます。
参考記事:天涯孤独の人にこそ役に立つ!成年後見制度をわかりやすく解説!後見人はどうやって探す?
まとめ:自分の財産の相続について早めの対策を心がけよう
体調が悪くなったり、判断能力が低下してからやろうと思っていても、気づいたらできない状態になっているかもしれません。
相続対策は、健康なうちに行っておくことが大切です。
以下のような事前対策から、ご自身の状況や考えに合ったものを検討して対策しておきましょう!
- 遺言書を作成する
- 財産管理等委任契約を結ぶ
- 成年後見制度を利用する
【参考記事】生命保険の受取人はどうする?▽