知恵袋で以下のような質問がありました。
例えば、天涯孤独の人がどこかの山中で亡くなってしまって遺体も発見されず、行方不明者届けも出されなかった場合、その人の戸籍はその人が生きているものとしてずっと残り続けるのでしょうか。
知恵袋
ここでは、天涯孤独の人の行方不明に関する手続きについてまとめます。
友人・知人が、天涯孤独の行方不明者の捜索願をできるか？
天涯孤独の友人・知人は、行方不明になった天涯孤独の人を警察に捜索願できるのでしょうか？見ていきます。
友人・知人は、天涯孤独の行方不明者の捜索願を出せない
捜索願を出せるのは、行方不明者発見活動に関する規則の第2章6条で定められており、以下の人物です。
①行方不明者の親権を行う者または後見人
②行方不明者の配偶者(事実婚を含む)や親族
③行方不明者を現に監護する者（病院の管理者など、日常生活について監督・保護している者）
④福祉事務所の職員や、行方不明者の福祉に関する事務に従事する者
⑤行方不明者の同居人、雇主その他の当該行方不明者と社会生活において密接な関係を有する者
そのため、ただの友人・知人では捜索願は受理されません。
天涯孤独の知人が行方不明になったらどうする？
捜索願できる人が制限されている理由は、悪意を持って人探ししている人などがいて犯罪に利用されてしまう危険があるからです。
また、なんでも受け付けていると他の緊急性の高い業務に集中できなくなるからという理由もありそうです。
そのため、友人・知人が捜索願を行うのは現実問題むずかしいでしょう。
しかし、⑤の「行方不明者の同居人、雇主その他の当該行方不明者と社会生活において密接な関係を有する者」に該当されれば受け付けられるかもしれません。
「行方不明者と社会生活において密接な関係を有する者」とは、同居人、雇主その他の行方不明者の身上、安全等を配慮する立場にある者であって、 行方不明者が確かに行方不明となっているかどうかを的確に判断できるものをいいます。
行方不明者との親密度や行方不明者が確かに行方不明となっているかどうかを証明できれば、あるいは受け付けてもらえるかもしれません。
また、自宅をご存知でしたら、警察に安否確認の依頼をして、大家さんと協力して部屋を開けてもらうことはできそうです。
いずれにしても一度警察に詳細に事情を伝えて相談してみることをおすすめします。
天涯孤独で行方不明のままになると戸籍は生存したまま残り続けるのか？
次に、天涯孤独の人が行方不明のままになった場合、戸籍はどうなるのかを解説します。
誰も「失踪宣告」しなかったら、戸籍上は生存し続ける
失踪宣告という「戸籍上死亡を認定する制度」があります。家庭裁判所に対して失踪宣告の申し立てを行うことにより実行されます。
失踪宣告には以下の2種類があります。
普通失踪：不在者（従来の住所又は居所を去り，容易に戻る見込みのない者）につき，その生死が7年間明らかでないとき。
特別失踪：戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき。危難失踪ともいう。
失踪宣告の申し立てを出せるのは、利害関係人（不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者）のみです。
そのため、利害関係人ではない友人・知人からは失踪宣告の申し立ては行えないことになります。
なお、行方不明のままで失踪宣告もしない場合は死亡扱いにならないため、相続は開始されません。
失踪宣告の申し立てを行い、死亡扱いにすることで行方不明者の相続を開始できます。
100歳以上で死亡扱いになる場合もある
では、だれも失踪宣告をしないと永遠に戸籍上で生存したままになるのかというとそういうわけではありません。
高齢者削除という仕組みがあり、高齢者（100歳以上）が戸籍があり、現住所がわからず、すでに死亡している可能性が高い場合は、法務局の許可を得た上で、自治体の職権で死亡の記載をできます。
2010年には、現住所が不明な100歳以上が23万4354人。うち120歳以上が7万7118人、150歳以上は884人であることが問題になりました。
戸籍と実態のかけ離れは望ましくないため、法務局は「120歳以上で現住所が不明なら、職権での戸籍削除の要件にあたる」とし、120歳以上で現住所が不明なら、生存しているか確認しなくても削除できるようになりました。
なお、高齢者削除は行政上の死亡であり、法律上の死亡にはあたらないため、相続は開始されません。相続を開始させるためには、失踪宣告が必要です。
まとめ
天涯孤独の人が行方不明になった場合の手続きについて整理してみました。
今回の情報が必要になるケースはなかなか無いかもしれませんが、知識として知っておくと何かの役にたつかもしれませんね。
【参考記事】寂しさを克服しよう▽
