天涯孤独の人が亡くなると、財産は最終的に国の財産になります。
「国の財産になるなんてなんかいやだ」
「特定の人や団体にゆずりたい」
と感じている方向けに、天涯孤独の人向けの遺言書の書き方を解説します。
★こちらの記事もおすすめ★
〜相続対策について解説〜
天涯孤独の人向けの遺言書の残し方
遺言書は、自分の財産をどのように扱ってほしいかを書面として残しておくものです。
だれにどのように財産を分配してほしいかを記載します。
遺言書の残し方は、大きくわけて以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言(自分で保管)
- 自筆証書遺言(法務局で保管)
※自筆証書遺言書保管制度 - 公正証書遺言(公証役場)
天涯孤独の方には、自筆証書遺言(法務局で保管)が断然おすすめです。
「自筆証書遺言(自分で保管)」や「公正証書遺言(公証役場)」は、死亡時に相続人に通知されません。親族のいない天涯孤独の方にとっては、遺言書を残していても気付かれない可能性が高いです。
「自筆証書遺言(法務局で保管)」であれば、戸籍担当部局と連携して死亡時に指定した人に通知してもらえます。
「自筆証書遺言(法務局で保管)」は、「自筆証書遺言書保管制度」という制度で、令和2年7月10日に開始された比較的新しい便利なサービスです。ぜひ活用しましょう!
法務局で保管する自筆証書遺言の利用方法
天涯孤独の人には、法務局で保管する自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度)が適しているため、それを利用した場合の手続きの流れや書き方を解説します。
自筆証書遺言書保管制度の特長・メリット
まず、自筆証書遺言書保管制度の特長やメリットを紹介します。
遺言書の紛失や改ざんのおそれがない
保管した遺言書は、原本および画像データとして管理されます。原本は本人の死亡後50年間、画像データは150年間保管されます。
そのため、遺言書の紛失や改ざんのおそれがありません。
遺言書の形式をチェックし、形式で無効になることを防げる
遺言書の保管申請時に、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、外形的なチェックが受けられます。
なお、チェックはしてくれるものの保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。
最終的な責任は本人にありますので、適切な形式になっていることをよく確認した上で申請しましょう。
遺言書の内容についての相談もできません。内容について相談したい場合は、別途弁護士等の専門家に相談する必要があります。
相続開始時に家庭裁判所の検認が不要になる
通常は、相続開始の際、家庭裁判所で検認が必要になります。遺言書が有効なものかを家庭裁判所に判断してもらうための申請です。
自筆証書遺言書保管制度で保管した遺言書は、家庭裁判所の検認が不要になります。
通知を受けられる
以下2つのタイミングで通知を受けられます。遺言書の存在に気づかれないことを防止できます。
指定者通知:法務局の戸籍担当部局と連携し、遺言者の死亡を確認できた時、遺言書が保管されている旨の通知が本人が指定した人に届きます。
関係遺言書保管通知:相続人等のうちのだれかが遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けた場合、その他の相続人全員に対して通知が届きます。
自筆証書遺言書保管制度の申請の流れ
自筆証書遺言書保管制度の申請は、以下のような流れで行います。
遺言書の様式等についての注意事項を参考に、本人が遺言書を作成します。
※法務局では遺言書の内容の相談はできないため、必要に応じて弁護士等などの専門家に相談しながら作成します。
本人が予約した保管所に行き、申請します。
申請に必要なものは以下です。
遺言書 | ホッチキス止めなどはしないこと |
---|---|
保管申請書 | – |
住民票の写し | 本籍及び筆頭者の記載入りで、マイナンバーの記載のないもの |
顔写真付き身分証明書 | 運転免許証、マイナンバーカードなど |
手数料(収入印紙) | 遺言書1通あたり3,900円 |
最後に保管証を受け取ります。
保管証があると、その後の閲覧や撤回などの手続きがスムーズになります。
保管証は再発行できません。なくさないようにしましょう。
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言の書き方は、民法(明治29年法律第89号)第968条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書で定められています。また、それに加えて自筆証書遺言書保管制度としてのルールもあります。
両方のルールで定められた形式で書く必要があります。
遺言書の様式等についての注意事項にまとめられていますので、この通りに書けば大丈夫です。
主な内容を以下に整理します。
・遺言書の全文、作成日、氏名を本人が手書きで書く。
・作成日は、日付を特定できるように書く。令和3年3月吉日のような曖昧な書き方は不可。
・財産目録は手書きでなくてもよい。ただし、その場合は全ページに署名押印が必要。
・書き間違いの訂正は、訂正または追加した旨を記載して署名押印が必要。
・押印は認印でも問題ない。
・サイズはA4サイズにする。
・上部5ミリ、下部10ミリ、左20ミリ、右5ミリの余白を確保する
・余白には何も書かないこと。
・片面のみに記載する。裏面には何も書かないこと。
・各ページにページ番号を記載する。1/2、2/2のように総ページがわかる形で記載。
・ホッチキス等で閉じないこと。
・消えるインク等で書かないこと。
・本人の氏名は戸籍どおりの氏名を記載する。
自筆証書遺言書保管制度のよくある質問
★こちらの記事もおすすめ★
〜相続対策について解説〜
まとめ
天涯孤独の人は、自分で遺言書を残していても発見されない可能性が高いです。
そのため、自筆証書遺言書保管制度を利用して、相続人にきちんと通知がいくようにするのがおすすめです。
【参考記事】相続のために養子縁組という方法も▽